まさか?→またか!

オーナーパティシエ・柿田衛二

こんにちは、「いつもいい素材 ずっといい笑顔」エルベランの柿田です。
2月のとある休日のことです。
たまたま朝の情報番組(TV)をつけていると、スイ一ツ特集をやっていました。
有名なお菓子の誕生秘話を再現を交えながら紹介するというなかで、某有名ロールケーキが取り上げられていました。
あまりの忙しさに作るのが間に合わず困っていたところ、社長に天啓が降りて巻き方を工夫して今の大ヒットロールケーキが生まれたんだそうです。
なるほどなるほど、大ヒット商品は素晴らしいアイデアのもとにできてるんだな~。
問題はここから。
さて、誕生秘話を聞いていよいよロールケーキを食べる段になった時のことです。
レポーターの女性が、「こだわりの牛乳から作られたこの生クリームが絶品なんです!」
「美味しいですねこの生クリーム!」
「生クリーム本当に美味しいですね!」と、生クリームを連呼していたんですね。
待てよと。
僕もそのロールケーキはよく知ってますが、確か生クリームは使ってないはず。
生クリームに植物性の油脂を混ぜたコンパウンドクリームを使われているはずだったけど、生クリームに変えたのかな?まさか?それだったら”すごいな”と思い会社のホームページを見てみました。
皆さん、なぜ生クリームだとすごいのか分かりますか?
賢明なエルベランファンの方ならもうお分かりかもしれませんが、生クリームは扱いが非常にデリケートなため大量生産には向きません。
常に氷に当てながら扱わなけれは5分で分離してきます。
1日に何百本も作るには相当なレベルの洋菓子職人が必要でしょう。
ホイップクリーム、コンパウンドクリームは、乳化剤や安定剤が入っているので分離の心配がなく、それこそ菓子職人でなくても扱えます。
また、原価的にも生クリームはコンパウンドクリームやホイップクリームよりも割高でロスも含めれば利益率が格段に悪くなります。
あと、コンパウンドクリームを使っている場合の常とう文句として「生クリームよりも軽くて食べやすいと評判云々」とよく書かれているのですぐに分かります。
生クリームが重たく感じるのは扱いが悪いからです。
話を戻しましょう。
その企業のウェブサイトには「新鮮で厳選された牛乳から作られたクリーム」と書いてありました。
どこを探しても「生」の字は見当たりません。
すべて「クリーム」です。
まぁ、絶対とは言いませんが9割9分生クリームではありません。
またか~!
生クリーム、ホイップクリーム抗争勃発。
でもこれは決してそのお菓子屋さんの責任ではなく、テレビ側の責任です。
もっと言うと、情報を扱うのが職業の人たちでも分からないほど、みんな生クリームのこと知らないという事なんです。
とすれば一番責任があるのは、製造元である乳業メーカーさんと、それを扱い製品にして販売している僕たち洋菓子店という事になるでしょう。
これから先、何十年後も美味しい生クリームのショートケーキが食べられるよう、生クリームを使った洋菓子文化が廃らぬよう、広く正しい生クリーム知識の普及に努めていかなければならないし、エルベランの2代目としてはその責務があると改めて感じる出来事でした。

こちらにも生クリームに関するお話しを書いています!
ぜひ、併せてご一読ください。
↓↓↓
ケーキ屋さんが話したがらない3つの真実

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