このケーキを食べて入社を決めたというスタッフも少なくない苺のショートケーキ。日本中のどこのお店にもある基本中の基本のケーキだけに食べ比べて入社を決めるパティシエも多く、そうして洋菓子専門学生が選んだショートケーキが美味しい店の信頼度は高いと思います。
エルベランの生クリームの歴史は、その創業から始まります。1964年、生クリームのケーキを主体とした、それまでどこにもなかったスタイルの洋菓子店が西宮に誕生しました。それが「北欧の銘菓 エルベ」エルベランの前身となるお店です。
当時、生クリームでケーキを作ることはまだまだ珍しく、しかも生クリーム1kgに対して100g~120gの砂糖が常識だった時代にエルベランで使用した砂糖はわずか70g。これは現代では普通ですが、当時生クリームと言えば合成油脂の入った粗悪品が多く砂糖をたくさん入れなくては食べられない、入れすぎても甘くて食べられない、そんなクリームが横行した当時には異例の少なさでした。ですから、お客様から「お宅、砂糖入れ忘れたんちゃいます?」とお電話いただくこともしばしばあったとか。それでも岐阜の農場まで足を運び、クリームの製造過程まで指定した特製の生クリームの美味しさを最大限活かすため、あえて砂糖を減らし素材の味にこだわったのでした。
オイルショックの不景気でその農場が閉鎖に追い込まれた時には、自分の理想の生クリームが手に入らなくなるなら、もうケーキは作れないと閉業も覚悟したそうです。しかし、縁あって鳥取県、大山にある白バラ乳業さまにレシピを引き継いでいただき私たちの生クリームは大切に守られてきました。
私たちの生クリームは、鳥取県内で6時間以内に集乳された牛乳から作られています。実は、鳥取県の牛乳の品質は国内でもトップクラスを誇り北海道産の牛乳よりも美味しいことが数値的に確認されています。通常の工程では、ホモジナイズ=脂肪球の均質化を行うわけですがこれを行わず乳本来の美味しさを損なわずに作られたのがノンホモの生クリームです。
また、脂肪分に関してもかつて日本では脂肪分が多い方が美味しい、価値が高いというイメージのみで高脂肪生クリームが流行った時期がありました。45%だからすごい、うちは50%だぞ、と言った高脂肪自慢がパティシエの間で交わされていた時代もエルベランはずっと35%のまま。何故ならば、生クリームの美味しさを決めるのは乳本来の味とバランス、口溶け感であり、脂肪分の高さではないという信念があったからです。(高脂肪分戦争は10年ほどで終わりを告げ今では聞きませんが)
そんな、世界で唯一の特製ノンホモ生クリームの美味しさ、くちどけの良さ、さっぱりとした後味を最大限活かすためにそれをサンドするスポンジ生地にもこだわりがあり、60年間、最高の生クリームを活かす最高のスポンジを焼き上げる技術を磨いてきました。僕が初めてエルベランのスポンジを担当させてもらったとき、自分が修行先で習った製法と全く違った事に戸惑ったものです。簡単に言えば発想が全く逆。しかし、理解すればするほど理にかなったその技術に感心したものでした。スポンジはケーキの基本となる土台です。これが焼けなければ美味しいケーキは作れませんから、必死に体に覚えさせたものです。その甲斐あって、生クリームが口の中で溶けだすのと同時に、口の中でほどけていくどこにもないスポンジ生地を実現、最後にイチゴの食感が残る理想の食感になっています。
- 国産小麦粉/
- 国産イチゴ(※)/
- カルピスバター/
- ノンホモ生クリーム/
- 北海道産てんさい上白糖/
- 希少糖
- 牛乳
- 小麦
- 卵